投稿:2025-09-26
更新:2025-09-28
N Back課題(Dual N Backなど)について調べていると、脳機能の向上に効果があると主張する人もいれば、そんなものはデタラメだという意見もあります。
せっかくやるなら、効果があるかどうか知りたいですよね。
そこで、N back課題に関する論文を一通り調査してみました。
結論から先に述べると、現代では脳機能全般を底上げするようなものではないとされつつも、集中力や、ワーキングメモリ(作業記憶)、感情のコントロールなど特定の分野には良い影響をもたらす可能性が高いと考えられているようです。
以降の章で詳細な研究結果について、時系列順でNバック課題の歴史を追っていきましょう。
時代は1958年に遡ります
1958年にWayne Kirchnerによりワーキングメモリの測定手法としてN Back課題が提唱されました。
ワーキングメモリとは、脳機能の一部で、情報を一時的に保持する機能のことです。集中力の低下や、マルチタスクの苦手さ、ケアレスミスはこの能力が低いことにより発生すると考えられています。
つまり、現代ではN Back課題はワーキングメモリを鍛える方法として知られていますが、元々はワーキングメモリがどれほどあるか測定する課題だったということですね。
MRIやPETというものが登場しました。
こういうやつです。
これにより、N Back課題と脳の働きの関係を見れるようになりました。
どうやら、N Back課題を被験者に行わせると、脳の前頭前野という領域が活発になっているということが分かりました。
詳しい方は、前頭前野と聞いて「おっ」と思われるかもしれません。
前頭前野とは、人間の脳のうち、創造性や、感情のコントロール、推論など高度な機能を司る部位で、人間が他の動物に比べて大きく発達した部位と言われています。
また、関連して後にADHDや統合失調症の患者にN Backタスクを行わせると、前頭前野の働きが一般の被験者に比べて弱い傾向にあるということも分かってきました。
Jaeggiら(2008)により、N Backタスクを繰り返し行うことでIQスコア(正確には流動性知能)が向上すると報告されました。
これはとんでもないことです。
雑に言えばN Back課題を行うと頭が良くなるということです。
N Back課題は本当に効果のある脳トレの一つとしてよく語られますが、その多くはこの研究に基づいているのではないかと思います。
ただ、この研究に対してはのちに懐疑的な研究も多くぶつけられることとなります。
Redickら(2013)をはじめとして、N Back訓練を通して得られる能力は知能全般に広く転移するものではないといった主張がされました。
また、Jaeggiら(2008)の研究の再現性に対しても疑問が投げかけられることとなりました。
インターネット上にはN Back課題は脳機能全体の向上には役に立たないとの書き込みもよくありますが、これらの研究に基づくものだと考えられます。
最終的に、現代ではN Back訓練は知能全般を底上げするものではないにせよ、特定の分野においては有効なトレーニング手法であることが示唆される論文が数多く発表され、この方向性で現代科学では認識されつつあるように見えます。
各分野での論文をいくつかピックして要約を列挙します。
ADHDの子どもに対してNバックを含む作業記憶訓練を行ったところ、注意制御が改善。症状軽減が報告された。
Klingberg (2005)より
Nバック訓練で、作業記憶容量が伸び、複雑な読解課題や推論課題にも転移効果。
Chein & Morrison (2010)より
高齢者を対象にしたNバック訓練で、作業記憶と処理速度が改善。認知機能低下を緩和する可能性を示した。
Buschkuehl (2008)より
若年成人にNバック訓練を行った結果、ストレス耐性が向上。コルチゾール反応が抑制された
Owens (2013)より
どうやら研究論文によると、N Backタスクは万能なものではないにせよ、注意力や、認知機能の向上、感情制御など特定の分野では有効である可能性が高いというのが、現代科学の立場として有力なようです。
...って十分ではありませんか!?
N Backトレーニングを行うことにより、ミスが減ったり、ネガティブな感情をうまくコントロールできたり、学習にも良い影響を及ぼす可能性が高いのであれば、十分やる価値はあると思う方も多いはずです。
こういったものは性質上、科学的に白黒断定することが難しい側面もありますが、N Backトレーニングが脳機能に良い影響を及ぼすことを示唆する論文が無視できない量あるということが分かりました。最後は実際に自分でトレーニングして試してみると良いかもしれません。
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